【公務執行妨害罪】構成要件と勾留、不起訴、罰金の可能性
東京都墨田区、錦糸町駅そばの鈴木淳也総合法律事務所です。 |
刑事事件の中で公務執行妨害について解説していきます。
目次
1.公務執行妨害罪とは
⑴ どのような場合に成立するのか
公務執行妨害とは、刑法95条1項で定められていう刑です。
公務執行妨害は、職務執行中の公務員に対して、暴行又は脅迫を加えることで成立します。
要件として、暴行・脅迫を加えた者に公務員の公務であるという認識が必要です。
また、 この公務が適法である必要もあります。
ですから、 警察官が無理やり所持品検査を行い鞄を開けようとしたので鞄を開けさせないために警察官を押したという場合は公務執行妨害罪が成立しないことになります。弁護人をつけて、当初からこの点を指摘する必要があります。
職務執行中の公務員に対して暴行を加えて怪我をさせた場合には、公務執行妨害罪の他に傷害罪も成立することになります。
⑵ 公務執行妨害罪はどのくらいの刑の犯罪か
法定刑は、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金となっています。
罰金刑がありますので、初犯であれば、罰金刑になる可能性が高いです。
ただし、罰金刑といえども前科となりますので、注意が必要です。
そもそも公務執行妨害罪のみが成立する場合は前述のとおりの刑ですが、暴行で公務員が怪我したとなりますと傷害罪も成立しますので、処罰される刑自体が重くなります。
2.公務執行妨害罪による勾留、起訴について
⑴ 公務執行妨害罪による勾留
統計によれば、事件の7割は検察送致されることになります。そのうち、勾留がされるのは、6割強です。4割弱は勾留請求されなかったり、勾留請求が却下されています。
弁護士を付けて、勾留請求に対する意見書を提出するですとか、勾留決定が出ても準抗告を申立てるなどして、勾留されないように活動していくことが重要といえます。
公務執行妨害罪は、勾留されない結果となっても、在宅事件として扱われることが多く、油断はできません。
⑵ 公務執行妨害罪での起訴
公務執行妨害罪の保護法益は、公務ですので、基本的に被害者公務員との示談が困難です。
勾留中に正式裁判されるのは3割弱、在宅事件を含めた起訴率は4割強となっています。
示談は困難でも起訴猶予を狙える犯罪ではあります。
そこで、公務執行妨害をしてしまった原因を振り返り、反省であったり、再犯防止策を検討して検察に意見書を提出して、不起訴を狙っていくことになります。公務執行妨害罪は、酒によった状況で職務質問してきた警官に暴行を加えてしまうような酔余の犯行が多いですので、酒癖が悪いのであれば専門官の診察を受けるなども必要となってきます。
3.公務執行妨害罪で逮捕・起訴された例
事例1 警察官による職務質問中
被告人は、令和4年11月12日午前6時9分頃、秋田県能代市〈以下省略〉付近道路上において、普通貨物自動車を運転し停車中、秋田県能代警察署勤務のB警部補(当時33歳)から道路交通法違反(赤信号無視等)の疑いで職務質問を受けた際、同警部補から逃走しようと考え、同車の運転席ドア外側直近に立って開いた運転席窓から車内に右腕を差し入れるなどしていた同警部補に対し、同車を前方に急発進させた上、同車の運転席ドア窓枠にしがみついた同警部補を引きずりながら同車を走行させて、同警部補を道路上に転倒させる暴行を加え、もってその職務の執行を妨害するとともに、前記暴行により、同警部補に加療約2か月間を要する後頭骨骨折、左前頭葉・側頭葉脳挫傷等の傷害を負わせた事案
→懲役2年 執行猶予5年(秋田地方裁判所令和5年6月7日判決)
職務質問中に逃亡しようとして暴行を加えてしまうケースは多くあります。
この事案は、信号無視で呼び止められたのですが、酒気帯び運転中の職務質問であったため逃亡を図ろうとしたものです。
本件は私服警察官の職務質問であったため、被告人は、裁判のなかで、警察官であるとの認識がなかったので公務執行妨害罪の故意がなかったと故意を争いました。公務執行妨害罪の成立には、暴行・脅迫を加えた者に公務員の公務であるとの認識が必要だからです。
裁判所は、警察官による職務質問であることを認識できたとして故意を認めています。
事例2 脅迫電話
脅迫めいた110番通報をしたとして、博多署は4日、公務執行妨害の疑いで逮捕し、発表した。容疑を認めている。
署によると、容疑者は10月16日午後8時ごろ、携帯電話から110番通報し、対応した県警通信指令課の女性警察官に「きさま、ぶっ殺すぞ」などと脅した疑いがある。
容疑者は昨年1月から110番通報を1300件以上繰り返していたといい、逮捕容疑となった通報の翌日、博多署が、内容が「エスカレートしている」と判断して捜査を始めた。(朝日新聞デジタル2023年12月5日の記事から引用)
公務執行妨害罪は、暴行または脅迫を加えることで成立します。
本件は、暴行ではありませんが、脅迫行為を加えており、またその回数も異常に多いため逮捕されるに至っています。
事例3 公立病院内での暴行
大垣署は11日、公務執行妨害と傷害の疑いで逮捕し、発表した。容疑を否認しているという。
署によると、容疑者は昨年12月25日、入院していた大垣市内の公立病院で、40代の女性看護師の顔を殴るなどして、顔や胸に約2週間のけがを負わせた疑いがある。(朝日新聞デジタル2023年4月12日の記事より引用)
公立病院の医師や看護師も公務員ですので、暴行によって傷害した場合は、傷害罪以外にも公務執行妨害罪が成立します。
4.まとめ
公務執行妨害罪は、罰金刑もあり比較的軽い犯罪ではあります。対応次第では、勾留を防げる可能性も高い犯罪です。早急に弁護士に依頼することが重要です。
当事務所では、刑事事件を積極的に取り扱っています。初回相談料は無料です。
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