自己破産による年金への影響と退職金との違い
東京都墨田区の錦糸町駅そばの鈴木淳也総合法律事務所です。 |
自己破産をすると、年金や退職金にどのような影響があるのか不安な方もいらっしゃるかと思います。
年金と名称が付くものにもいくつかの種類がありますので、種類ごとに分けて以下で解説します。
目次
公的年金
⑴公的年金を受給している方が自己破産する場合
公的年金には、国民年金と厚生年金があります。この年金を受給している方が自己破産をするとどうなるか。
心配なのは、自己破産すると今後受給出来なくなるのではないかということだと思います。
結論から申し上げますと、自己破産手続をしても公的年金はこれまでと同様に受給することができます。
自己破産手続では差押禁止財産は処分されません(破産法34条3項2号)。
国民年金の受給権は国民年金法24条にて、厚生年金の受給権は厚生年金保険法41条1項本文にて差押が禁止される旨が規定されております。したがって、公的年金の受給権は自己破産手続によって影響を受けることがないのです。
⑵国民年金の保険料の滞納がある場合
これまでは、年金を受給している方が自己破産する場合を説明しました。では、まだ受給年齢には達しておらず、国民年金の保険料を支払っている方が自己破産する場合を説明します。
国民年金の保険料を滞納なく支払っているのであれば、自己破産をしても何も問題ありません。
国民年金の保険料を滞納している方が自己破産をする場合、自己破産が認められても、滞納保険料は無くなりません。
破産法では、租税等の請求権は免責が許可されても責任を免れないと規定されおり(法253条1項1号)、租税等の請求権には国民年金保険料も含まれるからです。
そもそも、年金保険料を支払わないと将来自分が受給できる年金額が少なるといったデメリットが生じますので、自己破産するかどうかに関係なく滞納を解消するようにした方がいいでしょう。
一方で、国民年金保険料を支払えない理由が借金が理由なのであれば自己破産等の債務整理を行うべきですし、借金が理由ではなく収入が少ないことが原因なのであれば年金保険料の免除申請を行ったり、生活保護の受給も検討すべきであると思われます。
⑶年金担保貸付
年金担保貸付とは、年金を担保に金銭の貸付を受ける制度です。主に銀行を窓口として独立行政法人福祉医療機構と契約することになります。年金の支給額から毎回一定額が天引きされて返済に充てられることになります。
この年金担保貸付による債権は、自己破産をしても免責されません。
年金担保貸付の新規受付は令和4年3月末をもって終了します。
しかし、それ以前に貸付を受けている方は、返済が続くことになりますので、その方が自己破産をする場合には注意が必要です。
個人年金
⑴個人年金とは
個人年金というのは、民間の保険会社と契約して保険料を毎月積み立てて、将来に受け取る年金のことです。
主に個人事業主の方は将来受け取れる年金の額が少ないため、それに備えるべく個人年金に加入される方が多いです。
金銭の受け取り自体は、将来を予定しておりますが、積立式の生命保険と同様に解約返戻金というものが存在します。
解約返戻金というのは、現在この個人年金を解約した場合に戻ってくる金銭のことです。
積立した金額が多ければ多いほど解約返戻金も多くなります。
⑵解約返戻金は自己破産で処分される
この解約返戻金は、破産手続のなかで財産として扱われます。
したがって、自己破産をすると処分の対象となります。
20万円を超えない場合は、処分されない可能性が高いです。ただし、保険が複数ある場合は、それらの解約返戻金の合計が20万円以下である必要がありますので注意が必要です。
⑶個人年金の契約自体を継続したいという場合
このまま満期まで積み立てを続ければ積み立てた金額より多くの金銭を受け取れる可能性がありますので、個人年金を解約されると困るという場合もあるでしょう。そのような場合は、破産管財人に相談のうえ、解約返戻金相当額を新得財産から破産管財人に引き継ぐことで、放棄してもらえる可能性があります。
新得財産というのは、破産手続開始決定後に得た財産のことです。破産手続開始決定は、破産手続を裁判所に申し立てた後、早ければ当日、だいたいは1週間から2週間程度で出されます。
企業年金
企業年金というのは、会社を退職する際のもらえる給付金を分割して受け取る年金のことです。
企業年金には、 確定給付企業年金、確定拠出年金、厚生年金基金、中小企業退職金共済制度・特定退職金共済制度があります。
退職金の代わりに、このような企業年金を支給する企業は多くあります。
各企業年金につきましては、各法律により差押が禁止されています。したがって、公的年金時と同様に自己破産手続の中で処分されることはありません。
企業年金を導入している会社の場合は、退職金規定に記載がありますので、確認してみましょう。後述しますとおり、通常の退職金なのか、企業年金なのによって、自己破産手続内での取り扱いが大きく異なってきます。
退職金
⑴自己破産手続の影響
退職金は退職時に受け取るものですが、自己破産手続では、現時点で自己都合退職した場合に受け取れる退職金の金額を前提に考えていくことになります。
退職金の金額の8分の1を財産として処分の対象となります。
退職金の8分の1が20万円以下の場合は、基本的に処分はされません。
ただし、既に退職し退職金を受領している場合は、預貯金と化していますので、その全額が処分対象となってくることに注意が必要です。
ですから、 退職するタイミングと自己破産するタイミングに気を付ける必要があります。
このように、退職金と企業年金とでは、取り扱いが大きくことなります。自己破産される方にとっては、天と地ほど違うわけです。
⑵高額な退職金の場合
勤続年数が長い場合、退職金の金額自体も高額になる場合があります。
実際はまだ退職していないため、退職金を受領していないのにどうやって処分されるのか?という疑問が出てくると思います。
強制的に退職させられることはありません。
退職金の8分の1に相当する金銭を破産手続の中で支払うことになります。
例えば、現時点で自己都合退職した場合に800万円の退職金が支給される方の場合、その8分の1に相当する100万円が自己破産手続で処分されるものになりますので、100万円を破産管財人に支払います。
一括が難しい場合は、分割で支払っていくことになります。そもそも破産手続によって処分される財産から支払うことは出来ませんので、基本的には新得財産から支払っていくことになります。
そして、支払いが終わると、そのお金は債権者達へ配当されることになるのです。
まとめ
・公的年金を受給している方が自己破産をしても影響はない
・国民年金保険料を滞納した状態で自己破産をしても滞納額は免責されない
・年金担保貸付を受けている方が自己破産しても、その貸付残額は免責されない
・個人年金は、生命保険と同様の取り扱いとなり、解約返戻金が自己破産手続の中で処分される
・企業年金は差押禁止のため自己破産手続をしても処分されない
・退職金の8分の1の金額が20万円を超す場合、破産手続内でその金額を支払わなければならない
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