【養育費を支払っている人が自己破産】その後の対応
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東京都墨田区、錦糸町駅近くにある鈴木淳也総合法律事務所です。 |
養育費は基本的に子が成人するまでの長期間に渡って支払を継続するものです。
ですから、その間、養育費の支払い義務者が自己破産をするということもありえます。
その場合、養育費がどうなってしまうのか、解説していきます。
目次
1.自己破産をしたら養育費はどうなる
自己破産手続を行う最大の目的は、借金を清算すること、すなわち免除してもらうことにあります。
しかし、破産手続によって負債の全てが免除されるわけではありません。
破産法には非免責債権というものが定められています。
そのなかで、 子の養育費についても非免責債権と定められています(破産法253条4号ハ)。
したがって、養育費を支払っている人が自己破産をしても、養育費請求権は無くなりません、滞納されていた養育費についても免責されません。
また、自己破産をしたからといって養育費が減額されることもありません。
2.未払いの養育費の時効
自己破産する前兆として、養育費の支払いが滞っていることがよくあります。
未払いの養育費がある場合、そのまま放置しておくと一定期間の経過によって時効消滅してしまいます。
時効となる年数は、養育費の取り決めをどのようにして行ったかによって変わってきます。
①夫婦間の話し合いによって決めた場合ですと、時効期間は5年間です。
②一方、離婚調停や裁判手続によって決まった場合ですと、時効期間は10年間となります。
よって、当事者間の合意だけで養育費の取り決めをして未払いがある場合、5年以上前のものについては、
自己破産をするかどうかに関係なく時効により消滅することになります。
養育費の未払いがある場合は、早めに弁護士に依頼して回収を図るようにしましょう。
3.自己破産の準備に入ると未払い養育費の支払いは出来なくなる
前述のとおり、自己破産をしても養育費の請求権自体は無くなりません。しかし、破産する方は、破産手続が終わるまでの間、滞納している養育費については支払が出来なくなります。
これは偏波弁済が禁止されていることによります。
偏波弁済
偏波弁済というのは、特定の債権者にだけ返済をする行為のことをいいます。
負債については、破産手続という土俵の上で、全ての債権者に平等に清算させるのが原則です。
全ての債権者が平等に痛みを受けるということです。財産があれば、それを債権額に応じて分配を受けられます。
先ほど、養育費については非免責債権であると、いわば特別扱いされると記載しました。
しかし、だからといって、養育費は、他の債権者より優先的に返済を受けられるという特別扱いを受けられるわけではないのです。
破産しようと考えていても、「特別なつながりのある〇〇さんにだけは、返済をしておきたい」ということは許されないのです。
それは、破産手続の申立てをしてから始まることではありません。すべての債権者に約束どおりの支払が出来なくなった時点で、
特定の債権者にだけ返済を続けることは許されなくなります。遅くとも養育費の支払い義務者が自己破産手続を弁護士に依頼して以降は、滞納している養育費の支払いは出来なくなります。
滞納している養育費についても同様です。特に養育費は、自分の子の生活費となるわけですから、何とか支払いたいと思われる方もいらっしゃると思いますが、滞納分については、破産手続が終わるまでの間は支払えません。
4.偏波弁済を受けることのリスク
養育費の支払い義務者から偏波弁済を受けると、後日それを返還しなければならない可能性があります。
破産管財人は、偏波弁済について否認権(破産法162条1項)を行使しを破産手続中に取り戻すことが出来るからです。
破産管財人というのは、破産手続きの中で裁判所から選任される弁護士で、破産者の財産管理等を行います。
否認権というのは、破産する方が行った行為自体を無かったことにすることです。ですから、否認権を行使されます、養育費の弁済自体がなかったことになります。
たとえば、弁護士に自己破産手続の依頼をした後、滞納していた養育費30万円について破産手続開始前に支払ってしまったとします。
本来であれば、この30万円は支払ってはいけないものですので、その分、破産する方の預貯金の残高として残っていて、破産手続きの中で各債権者への配当に回るべきものであったと言えます。
そこで、破産管財人が破産する方の元配偶者に対し30万円の返還を求めることになるのです。
養育費の権利者からすると、義務者が支払うというから受け取っただけなのにと思うかもしれませんが、破産法のルールがあるため後に返還を求められるリスクがあるということです。注意しましょう。
5.将来発生する養育費について
養育費の支払い義務者が自己破産をしても、今後発生する養育費に影響はありません。そもそも、将来発生する養育費の支払い義務自体は、破産手続きをしている段階では現実に発生していないから、破産の影響を受けようがないのです。
本来的には、破産手続をしたことで、他の借金が無くなり、家計余剰が生まれやすくなるはずです。
したがって、養育費の支払いに回すためのお金を作りやすくなるといえます。
ただし、破産の原因が、元々負債が無かったのに収入の低下により負債を作らざるを得なかったというような場合、自己破産をしても家計余剰がさほど期待できません。そのような場合、養育費の支払い義務者からは養育費の減額を求める調停を起こす可能性もあるといえます。養育費の減額を求められた際は、減額しなければならない具体的詳細な理由を確認し、安易に減額に応じないようにすることが重要です。
6.自己破産が終わっても養育費を支払ってこない場合
自己破産を終えたにもかかわらず、相手が養育費の支払いをしてこない場合は、前述のとおり、未払い養育費に時効があることからも、早急に弁護士に依頼して法的な回収を行うようにしましょう。法的な回収というのは、相手の給与を差押えるといった強制執行のことです。
①養育費が調停や裁判で決められている場合、②夫婦間の話し合いで決めた場合であっても公正証書を作成している場合ですと、裁判を起こすことなくいきなり強制執行を行うことが可能です。離婚後に転職していて就業先が不明という場合であっても、「第三者からの情報取得手続」を利用することで相手の就業先が明らかとなり給与を差押えることが可能となります。
7.養育費の件でお悩みの方は、当事務所にご相談ください
養育費の未払いがある場合は、早急に弁護士に依頼して回収してもらうようにしましょう。
当事務所では養育費トラブルについて積極的に取り扱っています。
初回の相談料は無料です。
当事務所では、電話面談も実施しておりますので、遠方の方からもご相談、ご依頼いただいております。
面談は事前予約制です。問い合わせフォームからお問い合わせいただき予約をお取りください。
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