給料の前借りサービスに注意!給料ファクタリング
新型コロナウイルスの影響もあり、所得が下がり困っている人が給料ファクタリングという給料の前借りサービスを利用したところ高額な手数料を請求されるという被害が増えています。
ファクタリングというのは、法人や個人事業主が売掛債権を支払い期日前に第三者に売却することで、早く現金を手にするという資金調達の方法です。ファクタリング自体は有用なシステムであって、違法ということではありません。
給料ファクタリングの何が問題なのか解説していきます。
1.給料ファクタリングとはどのようなサービスか
給料ファクタリングというのは、将来に受領する自分の給与債権を業者に売却し、手数料を除いた金額を業者から受け取り、給与の支給日に給与全額を業者に支払うというものです。
例えば、今月末に10万円の給料を会社からもらうという権利を業者に売却し、4万円を手数料として差引き、6万円を業者から受け取り、今月末になったら10万円を業者に支払うといった形です。
10万円の給料をもらう権利を買い取ったのであれば、なぜ業者が利用者の勤務先から直接10万円を受領しないのか疑問になるところです。これは、労働基準法24条1項で賃金は直接労働者に全額を支払う旨が定められているからです。
業者が利用者の勤務先に給料の支払いを求めても、支払われません。ですから、業者は、利用者を通じて金銭を受領するのです。利用者としても、勤務先に秘密にできるというのは、一見すると魅力的ではあります。
ここが給料ファクタリングの特徴の一つです。
2.給料ファクタリングの問題点
給料ファクタリングの問題点は、高額な手数料を取るという点です。
先ほど、10万円の給料を売って、6万円を受け取り、給料日に10万円を業者に支払うという例を記載しました。1か月程早く現金を手にすることが出来る代わりに手数料として4万円もとられてしまうわけです。このように、受け取る金額に照らして、高額な手数料を求められる事案は多数存在しています。
結局、これは、6万円借りて、1か月たらずで4万円の利息を付けて返済するということではないのか。
利息に関しては、利息制限法、出資法で上限金利が定められています。
利息制限法が定める上限権利は以下の3つです。
①元本が10万円未満の場合は20%
②元本が10万円以上100万円未満の場合は18%
③元本が100万円以上の場合は15
貸金業法では、みなし利息も含めたいかなる利息であっても、この貸金業法が定める利息基準を超える利息での契約を禁止しています。
出資法では、業として年20%超す利息の契約をした場合には、5年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金、又はこの両方が課せられます。
先ほどの例で、6万円借りて1か月で4万の利息が発生したと考えますと、年利換算で800%を超す利息ということになります。
これまでは、いわゆるヤミ金業者がこのような暴利での貸付け行為をしている例が多かったのですが、最近は給料の前借りサービスとうたって、形を変えてヤミ金業者と同じようなことをやっているのではないのかということが問題となっています。
そして、ヤミ金業者のような違法な取り立て被害も出ています。お金が足りなくて安易に手を出し、支払ができなくなり、複数の給料ファクタリング業者に手を出し、雪だるま式に支払額が増えていってしまうのです。
3.法的にはどうなの?
給料ファクタリング業者は、貸付けではないと主張します。
しかし、今年3月、裁判所は、給料ファクタリングに関して、以下のとおりの判断をしました(東京地判令和2年3月24日)。
①ファクタリング業者は、給料を支払う会社からではなく利用者から資金を回収する前提で利用者に金銭を渡しているのであるから、貸付け行為である
②年利換算で出資法違反となる利息の契約であり、契約自体が無効である
この裁判は現時点で控訴されているので、まだ確定はしていません。
私としても、この東京地裁の判決と同じく、違法であると考えます。
過去には金貨金融という通常の貸付け行為ではない形態をとっていても、実質的にみれば売買を装った暴利での貸付けであるとして出資法違反となったケースがあります。
給料ファクタリングも形式上は売買であっても、実質的に考えれば貸付け行為であると考えざるを得ません。
なお、給料ファクタリングの契約自体が公序良俗に反して無効となっても、ファクタリング業者から受領した金銭についても利用者は一切の返済義務を負いません。
4.まとめ
貸金業者は貸金業法の規制によって、銀行もそれに準じた対応によって、借入れの審査が厳しいなかで、審査がゆるく借入れができるというのは、一見すると魅力かもしれません。しかし、その裏には、利用者を苦しめる大きな問題が隠れています。
新型コロナウイルスで困窮している方向けに、社会福祉協議会では緊急貸付を行っています。安易に、よくわからないところから金銭を受け取ることは避けましょう。金銭で困った際は一人で悩まず、弁護士、行政を頼ってください。