(コラム)新型コロナウイルスに便乗した詐欺
新型コロナウイルスで社会が先の見えない不安に陥っているなか、このウイルスに便乗した詐欺トラブルが増加しています。昨年の大型台風の後や元号が変わる際、詐欺が増えたように、大規模災害やイベントに便乗する詐欺が増える傾向にあります。しかし、全く新しい形の詐欺なのかといえばそうではなく、手口の入り口は変わるものの、途中からは一般的な手口と同じ形となります。
1 特殊詐欺の一般的手口
まず、特殊詐欺のなかで多い一般的な手口について解説します。
(1)カード手交型
これは、暗証番号とキャッシュカードそのものを受け取るという方法です。大胆な方法ですが、被害はかなり出ています。手口は以下のような感じです。
パターン1
①役所の職員を装う
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②「保険料が多く支払われているので返金したい」と被害者に電話をし、口座情報を聞き出す
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③「あなたのキャッシュカードが古いようで新しいものに変えないとこちらから振込ができない」と古いカードを受け取りに職員が自宅に来る
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④被害者は自宅に来た職員と名乗る者にキャッシュカードを手渡す
パターン2
①警察官、銀行協会職員を装う
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②「詐欺グループを逮捕して調べたところ、あなたの口座が不正に利用された形跡がある」と被害者に電話する
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③口座を凍結するので、キャッシュカードを受け取りに銀行協会の者が自宅に伺う旨を伝える
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④被害者は自宅に来た銀行協会と名乗る者にキャッシュカードを手渡す
(2)カード盗取型
こちらは、カードをすり替えて盗むという方法です。手口はカード手交型と途中までは同じようなものです。
自宅に職員を装った者がやってきて以降の手口が以下の通り変わります。
①職員を装った者が自宅にやって来て、持ってきた封筒にカードと暗証番号を入れさせる。その後、印鑑を持ってくるよう指示し、部屋に取りに行かせている隙に封筒の中のカードを入れ替える。
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②印鑑を持ってきて押印させたら、手続が完了したと伝え、入れ替えた方のカードの封筒を渡して、終了
なお、警察庁の報告によりますと、令和元年からこのカード盗取型が増加してきています。
オレオレ詐欺といいますと、息子や孫を語った電話をイメージされますが、最近多いのは警察官や銀行協会など親族以外の者を装うケースが60%以上です。警察庁の報告では、上記のカード手交型、盗取型が特殊詐欺の認知件数全体の半分以上を占めています。
2 新型コロナウイルスに便乗する詐欺
基本的には、先ほど述べたカード手交型、盗取型に当てはまります。
手口の入り口、すなわち電話を掛けてくるきっかけが、新型コロナウイルスに関する事柄になっています。
具体的には、「新型コロナウイルスの影響で助成金を支給することになった」という用件で、役所関係者を装って電話してくることが多いようです。
そこから先は、一般的な手口と同じで、口座情報等の個人情報を聞き出す→その口座では振込めない→キャッシュカードを回収するといった流れです。
新型コロナウイルスの感染拡大予防のため、外出自粛が言われている状況ですと、キャッシュカード等を「自宅に取りに伺う」という詐欺師の行為に合理性を与えることになります。
他にも、「新型コロナウイルスの検査を無料で受けられるがマイナンバーカードが必要である。これから自宅に取りに行く」といったケースや、公的機関を装って支援金開始のお知らせといったタイトルのメールを送り、電子申請の方が簡単であるとうたって個人情報を聞き出そうとするケースもあります。
新型コロナウイルスで生活が苦しい人が増えると、融資しないのに、簡単に融資が受けられると信じ込ませ、融資を申し込んできた者に対し、「保証金が必要です」などと言って金銭等をだまし取る融資保証金詐欺も増えると思われます。
3 まとめ
詐欺被害は、高齢の方ほど被害に遭いやすい傾向にあります。外出自粛が叫ばれるなかにあって、離れて暮らす家族に会いに行くことは、なかなか出来ませんが、電話でも良いので頻繁に連絡を取るなどして、ウイルス感染だけでなく詐欺被害の予防に務めることも大切です。
電話をかけてきた人に個人情報を話してはならない、キャッシュカードや通帳を自宅に来た人に渡してはならない、という基本的なことを周知していくことが重要です。更に、支援金等に関しては報道番組や新聞を通じて正しい情報を得ることを心掛けましょう。