給与差押時の会社のとるべき対応
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東京都墨田区、錦糸町駅近くにある鈴木淳也総合法律事務所です。 |
相談例
当社の従業員のAが何らかの支払を怠っていたようで、債権差押命令が裁判所から届きました。
Aの給与が差押対象となっています。どのように対応すればいいでしょうか。
当事務所にこのような相談が届きました。債権差押命令が届いた場合にどのように対応すべきか困ることもあるかと思います。以下で解説します。
目次
債権差押手続の流れ
まずは差押手続の流れの概要について説明します。
登場人物は以下の三者です。
債権者:債権差押の申立てをした者をいいます。債務者に対して金銭を支払ってもらう権利を有しています。
債務者:債権者に対して金銭の支払義務を負っている者です。裁判を起こされて確定しています。
第三債務者:債務者に対して金銭の支払い義務を負っている者のことです。。
第三債務者の具体例
・債務者が預金している金融機関(預貯金債権)
・債務者の就業先(給与債権)
・債務者の売掛先(売掛債権)
ですから、今回、貴社は第三債務者という立場になります。
差押手続の流れは以下のとおりです。
債権者が債権差押命令の申立て
↓
裁判所が債権差押命令の発布
↓
裁判所から債務者、第三債務者へ債権差押命令が送付
↓
第三債務者が裁判所に陳述書を返送
↓
裁判所から債権者へ送達通知
↓
債権者による取立
貴社が対応するのは、上記図のうち、債権差押命令が送付がなされて以降の話になります。
債権差押命令が届いてから貴社が行う対応
1.従業員への支払をストップ
第三債務者は、債権差押命令が送達された後、差押られた債権を債務者に弁済することは出来ません。
従業員の給与が差し押さえられた後は、当該従業員に対し、差押られた分の支払をストップすることとなります。
差押命令が届きましたら、担当部署に引き継ぎ対応してください。
万が一従業員に支払ってしまうと、債権者と債務者の両者への支払を負担することになります。
2.差押られる給与の範囲(民事執行法152条)
給与の差押がされても給与の全額が差押となるわけではありません。
差押の範囲は以下のとおりです。
①支払い期に受けるべき給付の4分の1(44万円を超える場合は33万円を控除した金額)が差押の対象です。
②「支払期に受けるべき給付」は,給与債権の名目額から所得税,住民税,社会保険料,通勤手当を控除した手取額。
給与から天引きされている住宅ローンや団体生命保険料といった私的な契約に基づくものは控除されません。
③扶養義務等債権が請求債権の場合は,月額66万円以下の場合は支払を受けるべき給付の2分の1(66万円を超える場合は33万円を控除した金額)が差押の対象です。
【具体例】
・請求債権が貸金返還請求権の場合で、貴社の従業員が支払い期に受けるべき給付が36万円の場合
36万÷4=9万円 9万円までが差押の対象範囲です。
・請求債権が養育費支払請求権の場合で、貴社の従業員が支払い期に受けるべき給付が70万円の場合
70万円-33万円=37万円 37万円までが差押の対象範囲です。
3.陳述書の返送
債権者が債権差押命令の申立て時に「陳述催告の申立て」をしていると、貴社は陳述義務を負うことになります。
陳述書というのは、そもそも債務者を雇用しているのか否か、差押えられた債権の有無や金額、支払い意思の有無などを記載して債権者に知らせるものです。
債権差押命令と一緒に2枚の陳述書が同封されて届きますので、必要事項を記入のうえ裁判所宛に返送します。
故意または過失によって陳述をしない,または不実の陳述をしたときは,これによって生じた損害を賠償しなければなりません(民事執行法147条2項)。
4.債権者からの取立に対応
⑴ 支払い時期
差押えられた給与をどのように支払えばいいのかという点ですが、債権者からの取立連絡を待つことになります。
代理人である弁護士が付いている場合は、代理人弁護士から連絡が来ることが多いです。
債務者に送達されてから1週間、または4週間が経過すると債権者が取立することが出来るようになります。
給料が差し押さえられた場合は、債務者に送達してから4週間の経過が必要です。
債権者は送達通知書といって、債務者に送達された日付が記載されて書面を裁判所から受け取っています。
貴社としましては、債権者に支払いをする前に、同通知書に記載されている債務者への送達日付を必ず確認するようにしてください。
⑵ 支払い方法(振込手数料)
給与債権は取立債務となります。
取立債務とは、債権者が、債務者の住所または営業所に取り立てて給付を受けるもののことです。
債権者への支払方法として、振込みが選択されることが多いですが、振込手数料は債権者が負担すべきものとなります。
したがって、支払いの際は振込手数料を控除した金額を振り込めば足ります。
会社のことでお困りの場合は当事務所へご相談ください
従業員の給与が差押られた場合、適切な対応をしないと二重払いや損害賠償請求のリスクが生じます。
まずは弁護士にご相談なさっていてください。
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お得な顧問契約サービスも用意しております。
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