【財産分与】退職金の扱い方。計算方法と分与する時期
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離婚する際に問題となるのが財産分与ですが、退職金というのは高額になることが多いですので、財産分与の対象になるのか大きなポイントとなります。
そこで、財産分与に退職金が含まれるかについて解説します。
目次
退職金は財産分与の対象となるか
専業主婦の方が夫を支えてきたのに、離婚した後に夫が受領する退職金について1円も貰えないのか?
離婚時の財産分与の際に退職金をどのように考えるのかがポイントとなります。
一般的に、 退職金は、賃金の後払いとしての性質を有しています。つまり、労働の対価としての側面があり、毎月貰う給料といわば同じであるということです。
勤務をしていたことで退職金を受領できるということは、家事労働を含めた様々な協力を得て勤務できたわけですので、夫婦の協力によって得られる財産といえます。
婚姻中に給与を貯蓄して築いた預貯金等と同じですね。
したがって、 退職金も離婚の際の財産分与の対象となります。
配偶者が公務員の方ですと、退職金の額が多額になることも多くありますので、財産分与決める際に見逃さないようにしましょう。
弁護士に依頼すれば、退職金についても含めて計算をし、財産分与を求めていきます。
ただし、会社から支給される金銭が労働の対価といえないような場合には、財産分与と対象とはなりません。
事案
AはBと離婚した1年後に勤務していた会社が統廃合により解散した。この先2年間の生活費補償という名目で約914万円が支給された。この金銭の支給については離婚時にはこの支給について何も決まっていなかった。
裁判所の判断
「離婚後約1年を経過した時点であり、かつ離婚時にはその支給が決定されていなかったものであり、しかも支給の趣旨は勤務先の合供に伴う相手方の爾後2年間の生活補償というものであるから、この支給時期、態様及び趣旨からして、同金員が財産分与の対象となる退職金あるいは功労金に該当すると認めることはできない。(東京家庭裁判所八王子支部平成11年5月18日審判)」として、会社から支給された金銭が財産分与の対象とならないと判断しております。
財産分与の対象となる範囲と計算方法
では、配偶者が受領する退職金全額を財産として扱うことができるのか?
たとえば、40年間勤務したけど、独身期間が長くて、婚姻期間は10年しかないという場合、
退職金の全額を財産分与の対象とされてしまうと不公平な感があります。
そもそも、退職金が財産分与の対象とされるのは、夫婦で協力して得られる財産と考えるからです。
したがって、夫婦が協力したとはいえない婚姻期間外の部分については、除くべきといえるでしょう。
そこで、 財産分与の対象となる退職金は、婚姻期間中の就業分に限られます。
財産分与の対象となる退職金の額は、以下の式から計算します。
基準時における退職金額×(婚姻期間)÷(就業期間)
基準時というのは、別居時もしくは離婚時ということになります。
具体例
AとBは結婚して20年。AはC社に就職してから30年が経つ。AとBの夫婦関係が悪化して離婚することとなった。現時点でAが退職すると仮定した場合の退職金の金額は1200万円である。Aの退職金のうちいくらが財産分与の対象となるのか。
終業期間が30年、婚姻期間が20年ということですので、退職金のうちの3分の2が財産分与の対象として計算します。残りの3分の1は、夫婦共有財産ではないので、一方の特有財産という扱いです。
1200万円×20年÷30年=800万円
この場合、Aの退職金として800万円を財産として計上し、財産分与を決めていくこととなります。
先ほどの具体例で、Aの就業期間が20年、AとBの婚姻期間が25年というような場合は、受領する退職金の全てが財産分与の対象として計算します。
既に受領した退職金
退職金が財産分与の対象になるとしても、離婚時に既に退職金を受領しているのか、将来退職金を受領するのかで清算方法が大きくことなります。
既に退職金を受領している場合、基本的には預金残高という形になっています。
預貯金となっている場合は、通常の預貯金の財産分与と同じです。
預貯金に限らず、退職金が別の形の資産に変化していても、変化後の資産の種類のまま清算対象となります。
例えば、受領した退職金でアパートを建設して賃料収入を得ているという場合、このアパートの価値(正確には、アパートの建築費に対して退職金が使われた割合分)が財産分与の対象となります(福岡家庭裁判所小倉支部昭和46年8月25日審判)。
また、退職金が残っていないような場合は、財産分与の対象とはなりません。
将来受領する退職金
⑴財産分与の対象となるのか
まだ退職していないような場合は、将来本当に退職金を受領できるのかどうかわかりません。
そこで、退職金が支給される蓋然性が高い必要があります。
①会社の退職金規定で支給されることが明示されている
②会社の経営状況に問題がない
③勤務状況に問題がない(仕事が長続きしない傾向にない等)
④退職金が支払われるまでの期間
例えば、60歳で支給される会社で、50代半ばなのか、30代なのかによって、支給までの期間が大きくことなります。
10年以内に受領できる退職金であれば認められる傾向にありますが、それ以上先の将来の退職金に関しては、支給される確実性が乏しくなるため認められにくくなります。
このように退職金が支給される蓋然性を判断にするにあたっては、退職金の支給条件や算定基準等の詳細な情報が必要となります。
基本的には配偶者に提出を求めるのですが、提出に消極的なこともあります。そのような場合は、調停や裁判の中で勤務先への調査嘱託を利用することとなります。
退職金の金額については、別居時または離婚時に自己都合退職すると仮定した場合に支給される退職金額を前提とするのが一般的です。
ただ、他の考え方もありますので、絶対というわけではありません。
⑵支払時期
将来受領する退職金が財産分与の対象となって配偶者に分与することになるとしても、離婚時に現実に受領しているわけでありません。
分ける財産が多数ある場合は、得られる財産から分与する財産を控除して計算して、得られる金額を少なくする形で対処することができます。
しかし、分与で得られる財産がさほどない配偶者の場合、離婚時に配偶者に対し、資力がなくて支払えないということもあります。
そこで、実際に退職金を受領した時点を支払時期をする場合もあります。裁判所も、退職金を受領したときに支払うように命じているものもあります。この場合は、離婚時に自己都合退職した場合の退職金額よりも多い金額について財産分与を認めるものが多い傾向です。
離婚時に自己都合退職すると想定して算出される退職金額よりも定年まで勤めた場合に得られる退職金額の方が高額になることが一般的です。ただし、退職時期が不確定であるし、配偶者が任意に支払ってくるか不透明であることから、離婚時を支払い時期とすることを望む当事者が多いのが実情です。
具体的な分与額について
財産分与での退職金の分与額の計算は以下の式でおこないます。
基準時における退職金額×婚姻期間÷労働期間×寄与率
財産分与における寄与率は、基本的には0.5です。
財産分与は、「夫婦の財産を半分ずつ分ける」というのが基本的なのですが、それは寄与率が一般的に0.5とされることが多いからです。
しかし、夫婦間の具体的事情によっては、当然寄与率が0.5を下回ることがあります。裁判所も寄与率として、0.4、0.3と認定するこがあります。
まとめ
・退職金も財産分与の対象となる
・財産分与の対象となる退職金は婚姻期間の部分に限られる
・将来受領するであろう退職金であっても財産分与の対象となる
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離婚を考えてらっしゃる方は、早めに当事務所にご相談ください。
財産分与に関しては、配偶者が有している財産に関して主張立証する責任は、ご自身が負うことになります。財産を隠される前に弁護士から助言を受けておくのが望ましいです。
当事務所では離婚問題について積極的に取り扱っています。
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